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 視線を移動させると白岡さんが採寸されていて、ドレスまで準備していることに驚いた。  普通手持ちのドレスで済ませてしまいそうなところを、そこまでやるなんて。  気合い、入ってるんだなー……  だとしたら俺も気合いを抜くわけにはいかないか、頑張ろう。頑張ろうとは言えど、本当にセリフが少ないからそこにいるだけでも成り立つようなもんだけどな。  対する爽介は本命の王子とだけあってセリフも立ち回りも多い。  爽介ならこなせてしまうだろうから心配することはないと思うけど、それでも大丈夫だろうかとは思う。  特にこの────眠りから覚めたオーロラ姫と、王子の会話。  「もしもう一度あなたが眠りに落ちてしまっても、何度でも私があなたを助けます」……だなんて。爽介が言ったら会場の女の子倒れちゃうんじゃないかな。  寧ろ白岡さんでも耐えられないのでは。 「椎名くん! こっち来てー!」  衣装係の子に呼ばれて行くと、そこにはいくつか王子様が着るような服が用意されていて、あまりにも完成度が高いそれに驚いた。 「椎名くん、どれ着たいとかある? たぶんサイズ的にはどれでも大丈夫だと思うんだけど」 「……うわあ……」    試しにひとつ手に取ってみると、キラキラした飾りがついたジャケットやシルクの素材のブラウス等、本当に映画に出てくるような王子様の服装で圧倒された。  まさか小さい頃に憧れた王子の服をここで着ることになるなんて思わなかったな。  どれがいいんだろう……と悩んでいると、またもや麻橋先生が急に隣に立った 「びっ……くりした……」 「おまえだったらこれがいいんじゃないか?」  そう言って麻橋先生が選んだのは、白を基調としたものにゴールドの装飾がついているものだった。  俺に白なんて似合わないだろう、と思っていたけれど、先生がそれと言うのならそれなのかも……しれない…… 「私もそれがいいんじゃないかなって思ってたの! 早速着てみて!」  部屋の角に作られた簡易的な試着室に押し込まれ、俺は着替えざるを得なくなってしまった。  ジャージを抜いで適当に畳み、試しに服を着てみる。  思いのほか重さを感じるジャケットは、俺が動く度に装飾が輝いてステージの上なら尚更綺麗に見えるんだと思う。  近くに姿見がないからどう見えているのかわからず、どうにも客観的な目に頼るしかない。  覚悟を決めて俺の身体を隠していたカーテンを開けると、そこには麻橋先生が立っていて、俺の姿を見て「おお……」と感動したような声にならない声を出していた。  するとすぐに俺の周りにひとが集まってきて、爽介や優馬が興奮気味で俺の頭のてっぺんからつま先まで見て、言った。 「めっちゃ似合ってる! やば! かっこよ!!」 「すげえ……どっかの国の王子って言われても全然違和感ない」  いや、そこは違和感あれよ。  どう見えているんだろう……と思いつつ立ち尽くしていると、優馬が即座にスマホを構えてパシャリと写真を撮った。しまった、迂闊だった。  すると真っ先に先生が反応して、優馬の隣に行く。 「これ、後で俺にも寄越せ」 「任せてばっしー」 「俺の目の前で取引するな」

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