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第二章・3

「は、恥ずかしいから、イヤだな。僕、下手だし」 「上手いか下手かは、僕が判断するよ。さあ、見せて」  畳みかけて来る希の声音には、抗いがたい響きがある。  魅入られたように、白穂はスケッチブックを希に渡していた。  ページをめくる希は柔らかな笑みを絶やさず、終始無言だった。  どこもかしこも、描かれているのは希だ。  本を読む、希。  空を眺める、希。  伸びをする、希。  いろいろな表情の希を、白穂は瞬時に捕えて描きとめていた。 「嬉しいな、ありがとう」  スケッチブックを観終わった希は、白穂に静かにそう言った。 「あ、どういたしまして」  実はまだ、あと2冊あるとは言えない白穂だ。  その代わり、素朴な疑問を口にした。

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