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第二章・4

「どうして、ありがとう、なのかな。僕、勝手に結城くんのこと見て、内緒でこっそり描いてたのに」 「だって、好意も無しにここまで熱心に描いてはくれないだろう? だから、ありがとう、なんだ」 「こ、好意、って」  白穂の頬は、どんどん赤くなってゆく。  そう、好意だ。  僕は、結城くんのことが好きになっちゃったんだ。  布団から少しだけ顔をのぞかせている白穂に、今度は希が疑問を投げかけた。 「どうして隠れるように、僕を描いていたのかな?」 「だって。結城くんは優秀なαだし、でも僕は冴えないΩだし」 「僕は人をαだΩだ、なんて気にしないよ。それに、こんなに素敵なデッサンができる君は、決して冴えない人間なんかじゃない」  あぁ、こんな優しい言葉、初めてかけてもらえた。  白穂の胸は、温かな想いで満たされた。

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