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第二章・9
「ホントにごめん。今度から、気を付けるから!」
「平気さ、椅子に座ってたんだから。でも、お詫びのしるしに何かご馳走してくれる?」
一緒に下校してカフェにでも寄ろう、という希の申し出に、白穂は一も二もなく賛成していた。
帰り道、歩きながら希は白穂に提案していた。
「白穂って、お父さんも画家だって言ったよね。家にアトリエある?」
「あるけど?」
できれば、とそこで希は溜息を吐いた。
「できれば、部室じゃなくって、そこで君のモデルをしたいよ」
「え、いいの?」
うん、と希はうなずいた。
「周囲からたくさんの視線を受けながらモデルをすることは、結構疲れるよ」
できれば、君一人の視線を受けていたい。
そんな希の言葉は、まるで恋のささやきのように白穂の耳をくすぐった。
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