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第三章 好きだから
父のアトリエの片隅を借り、白穂は毎日希と共に過ごした。
当の父は別のビルで絵画教室の講師をしているので、遅くまでここへは戻らない。
二人きりでいると、静かだ。
集中して、白穂は希を描くことができた。
希も、いい感じにリラックスしてくれている。
「ちょっと、休憩しようか」
そう言うのは、必ず希の方だった。
没頭してしまうと、白穂は時間を忘れてしまうのだ。
「いつもごめんね」
「こちらこそ、ごめん。筆の乗ってる時に、中断させちゃって」
お茶とお菓子で、ちょっとしたブレイクタイム。
遅くなると、白穂は夕食を用意して希に振舞うこともあった。
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