23 / 76

第三章・2

「レトルトのカレーで、ごめんね」 「肉、マシマシで入れてくれてるじゃないか。サラダまで作ってくれて、僕はこれで満足だよ」  白穂には、母親がいない。  だが、それをあえて話題にしない希の優しさに、白穂は救われていた。  夕食を摂った後、創作を再開することもあった。  気が付けば、もう21時、なんてこともざらだ。  それでも希は、優しく笑った。 「大丈夫。僕の母、単身赴任だから」  希に父はいない、とのことは、その時知った。  二人とも片親。  そこに白穂は、運命めいたものを感じていた。 (もしかして、神様が引き合わせてくれたのかもしれない)  そんな生活が、二人の日常になっていた。  そして……。

ともだちにシェアしよう!