39 / 76

第四章・9

 その日、希が学校へ来なかった。  いつもの場所で読書をしていない彼を不審に思い、白穂は隣のクラスまで訊ねに行ったのだ。  そこで聞かされたのは、耳を疑う言葉だった。 「結城、転校するんだぜ。知らなかったのか?」 「そんな……」  なぜ?  どうして?  ようやく、絵が完成したのに。  特別な夜を、一緒に過ごしたのに。  これからもずっと、仲良くできると思っていたのに!  訊きたいことは、たくさんあった。  だが、携帯で希の声を聞くと、喉が詰まって何も話せなくなってしまった。

ともだちにシェアしよう!