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第五章 別れと新しい命
希の旅立ちの日は、妙に清々しく晴れた。
白穂の胸の内を思えば、神様は土砂降りにしたはずだが。
駅のホームへ入った白穂は、すぐに希の姿を見つけることができた。
一か月以上、見続けて来た姿だ。
誰より深く、想い続けた人だ。
間違えようが無かった。
「来てくれたんだね、ありがとう」
「ホントに、行っちゃうんだね」
つん、と鼻の奥が痛む。
あぁ、ここで泣くわけにはいかないと思って、家で散々泣いてきたのに。
涙腺を締めようと、白穂は手にした紙袋を差し出した。
「これ、よかったら受け取って欲しいんだ。僕の気持ちがこもってるから」
「これは……」
中から出てきたのは、3冊のスケッチブック。
希がぱらぱらとめくると、そこには様々な表情の自分が活き活きと描かれていた。
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