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第五章・2

「僕が、中庭で本を読む結城くんを描いてた頃の作品だよ」 「3冊も。こんなにたくさん……」  本を読みながら、こんな顔をしていたのか、僕は。  そして、その細かな表情の違いをすくい取り、絵にしていたんだ。白穂は。 「ありがとう。宝物にするよ」 「もらってくれる?」 「当たり前じゃないか」  ぽろり、と希の瞳から涙が一粒こぼれた。  一粒こぼれると、後から後から次々とあふれ出た。 「希、泣かないで」 「白穂こそ、眼が真っ赤だよ」  そこに、電車が出発する5分前を知らせるベルが鳴った。

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