43 / 76
第五章・3
別れの5分前。
ただ泣いて過ごすのは、イヤだ。
でも、何を語ればいいのか解らない。
とても、笑って過ごす事なんかできやしない。
そこへ、希が腕を差し伸ばしてきた。
「あと5分でお別れだ。一番有意義で、長く感じられる5分間を過ごそうよ」
「え?」
希の腕が、白穂の身体に回された。
白穂も、希をしっかり抱きしめた。
薄手の夏服を通して、互いの体温が伝わってくる。
「忘れないよ、白穂のこと」
「僕も、希のこと忘れない」
そして、ゆっくり口づけあった。
残り5分、唇を離すことなく、ずっとずっとキスをしていた。
ともだちにシェアしよう!