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第五章・3

 別れの5分前。  ただ泣いて過ごすのは、イヤだ。  でも、何を語ればいいのか解らない。  とても、笑って過ごす事なんかできやしない。  そこへ、希が腕を差し伸ばしてきた。 「あと5分でお別れだ。一番有意義で、長く感じられる5分間を過ごそうよ」 「え?」  希の腕が、白穂の身体に回された。  白穂も、希をしっかり抱きしめた。  薄手の夏服を通して、互いの体温が伝わってくる。 「忘れないよ、白穂のこと」 「僕も、希のこと忘れない」  そして、ゆっくり口づけあった。  残り5分、唇を離すことなく、ずっとずっとキスをしていた。

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