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第五章・4

 ドアが閉まり、電車はゆっくりと動き始めた。  その向こうには、希が。  涙を流し、眼をこすっている。 「希……、希!」  必死でその姿を追ったが、電車はどんどん加速してゆく。  最後はホームの端まで行って、白穂は膝をついた。 「希……、うぅ、う。あぁ、うぁああ!」  白穂は、泣いた。  憧れだった、希。  優しかった、希。  そして、僕を愛してくれた希。  彼は、もういない。  僕の傍から、離れて行ってしまったんだ!  泣き終えても、膝をついたまましばらく動けなかった。  世界が、灰色に見えた。

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