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第五章・6
ある日、白穂はいつものように美術室で絵を描いていた。
ところが今日は、何か体調がおかしい。
下腹が痛むし、吐き気がしてくる。
「何か、おかしいな……」
体が、妙にだるい。
意識が朦朧としてくる。
腹を押さえて顔をゆがめた白穂を、顧問教師が心配した。
「沖、大丈夫か?」
「すみません。少し、お腹が痛くて」
ふらふらの白穂を支えて、教師は保健室を訪れた。
養護教諭は白穂をベッドに寝かせて、顧問には美術室に戻るよう促した。
そして二人きりになった途端、養護教諭は真剣な顔つきで問いかけて来た。
「沖くん、Ωだったわよね。心当たり、ある?」
「どういう意味ですか?」
「妊娠、したかもしれない、ってこと」
「え……!?」
教諭は妊娠検査薬を、白穂に渡した。
恐る恐る調べると、それはしっかりと陽性反応を示した。
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