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第五章・9
「ダメだ。今なら間に合うのか? 堕ろすんだ!」
「僕、絶対に産むからね!」
「白穂、お前はまだ子どもだ。子どもに、子どもが育てられると思ってるのか?」
「お母さんは、20歳で僕を産んだよね? 17歳と20歳じゃ、たいして変わらないよ」
それには、苦い顔をした父だった。
二人は、画家とモデルとして知り合ったのだ。
まだ大学生だった母は、父と愛し合い白穂を産んだ。
大学は、辞めざるを得なかった。
「……どうやって生活していくんだ。収入もないくせに」
「だから、お父さんに協力して欲しいんだ。僕が一人前になるまで、この家で子育てさせて欲しいんだ。家事も育児も、ちゃんとやるから!」
「……学校は、どうするんだ」
「最悪、退学だって保健の先生は言ってた」
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