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第五章・10

 はぁ、と父親は溜息をついた。  酒臭い自分の息が、忌々しい。  さっきまで、能天気に飲んでいた自分が情けない。  息子が妊娠するまで放任していた自分が、悔やまれる。 「……何ヶ月経つんだ?」 「え?」 「心当たりのある日から数えて、何ヶ月くらい経ってる?」 「えっと、4ヶ月くらい」  俺も覚悟を決めなきゃな、と父は表情を引き締めた。  妊娠12週を経過すると、出産と同じ方法での中絶になる。  死産届けを出さないといけないし、火葬も必要だ。  そんな体への負担と、精神への痛みを我が子に味わわせたくなかった。 「明日、一緒に病院へ行ってちゃんと確かめよう」 「お父さん」 「もし本当に、赤ちゃんが健康に育っているのなら、産んでもいい」 「ありがとう、お父さん……」  安心し、気が緩んだのか涙が出て来た。 (でも……、これは希に伝えるべきなのかな……)  白穂には、もう一つの課題が残っていた。

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