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第六章・4

 気づくと、部屋に父が来ていた。  スマホを置いてうなだれる白穂に、静かに言った。 「ちゃんと伝えたか? 結城くんに妊娠のことを」 「……」   黙って首を横に振る息子に近づくと、父は腰を落とした。 「何か事情があったようだな、先方に」 「お母さんが、手首切ったんだって……」 「そうか。そんな時に、とても言えた話じゃないな」  しかし父は、白穂の肩に力強く手を置いた。 「また機会はあるさ。安心しろ、お父さんがついてる」 「ありがと……、お父さ……」  ぽろぽろと涙をこぼす息子の背中を、父は優しく撫で続けた。

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