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第六章・8

「もしもし、希? 今、電話いい? 迷惑じゃなかった?」 「迷惑なもんか。嬉しいよ、君の声が聞きたくてたまらなかったんだ」 「ありがとう。あの、さ。変なこと訊くけど、新しく付き合ってる人とか、いる?」 「ホントに変なことだね。いるわけないだろう、白穂という大切な人が僕にはいるんだから」  ありがとう、ともう一度白穂は言った。  もし希に新しい恋人ができていたら、何も言わずに電話を切ろうと思っていた。 「あの。近いうちに、こっちに。僕の家へ来られない? 泊ってくれても構わないから」 「……いいの?」 「いいよ。何で?」 「だって僕は、一方的に君から離れて行ってしまった薄情な男だよ。怒ってない?」 「怒るもんか。会えれば、どんなに嬉しいか……」  涙声になった白穂に、希は勘を働かせた。 (白穂の身に、何かあったな)  そう思った希の決断は、早かった。

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