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第六章・9
「今度の土日を使って、白穂の家へお邪魔するよ。それでいいかな?」
「お母さんは? 大丈夫なの?」
「今、精神科に入院してる。ちゃんと薬も飲んで、先生に見守られているから安心できるんだ」
「ごめんね」
「白穂が謝ることなんか、何一つないんだよ」
やっぱり。
やっぱり希は、なんて優しいんだろう。
通話を終えて、すぐにメールが届いた。
『これからは、毎日電話やメールをしよう』
「ありがとう、希……」
涙が、次々にあふれて来た。
嬉し涙だ。
これからは、毎日希の声が聞ける。
メールも、できる。
「そして、土曜日に会えるんだ」
一度狂った歯車が、少しずつ噛み合ってゆく心地だった。
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