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第七章・2

 車中での話は、白穂のことに絞られた。  しかも、本人ではなく、彼の描く絵についてだ。 「結城くんは、白穂の絵をどう見る?」 「素晴らしいと思います」 「どういう点が?」 「デッサン力は確かだし、色彩感覚も常人とは違うものを持っている、と感じました」  希は、白穂の描いた自分の絵を思い浮かべていた。  見る人の心を、温かくしてくれるような、優しい画風。 『読書する少年』は、市民展からすでに自宅へ戻っていると、白穂に聞いている。  早く、もう一度あの絵を見たい。  そして、おめでとう、と彼を抱きしめたい。  そんな希の返事を、父親は高く評価していた。 (絵の分かる子が選ぶ表現を、持っている)  頭のいい少年なのだろう、と感じてもいた。  だがしかし。 (白穂を泣かせるようなことを言えば、一発殴らせてもらうぞ)  こんな物騒なことも、考えていた。

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