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第七章・3
希は、眼を円くした。
そして、白穂の姿をまじまじと眺めた。
少しせり出している、腹部。
そして、それを大切そうに抱える手のひら。
「白穂、僕の子だね?」
「……うん」
白穂も、白穂の父も、息を詰めて希の次の言葉を待った。
緊張で、心臓がばくばく打った。
「産んでくれるの? 僕の赤ちゃんを」
ぱっ、と白穂の顔が晴れた。
「産んでもいいの?」
「当たり前じゃないか!」
希は、その場にくずおれた。
「ごめん。白穂、ごめん。一人で悩んでたんだね? 僕にずっと、言えなかったんだね?」
「泣かないで、希。いいんだ。君が祝福してくれるのなら、もういいんだ」
二人で抱き合い、涙を流した。
5ヶ月ぶりに触れ合い、キスをした。
父は、いつの間にか姿を消していた。
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