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第七章・7

「白穂。僕、いつも読書をしてたよね」 「う、うん」  そう、それが縁で出会い、惹かれ、結ばれた二人だ。 「あれは、プログラミング言語の本だったんだ」 「小説じゃなかったの?」  幼い頃からパソコンの魅力に取りつかれていた、希。  いつしか自分でも、ソフトを作ってみたいと考えるようになっていた。 「実は今、僕の開発したソフトがアメリカ企業から1億円での買収オファーを受けています」  白穂の父は、あんぐりと口を開けた。 「1億!?」 「とりあえず、そのオファーを承認し、結婚、出産費用に充てたいと思うのですが」  やれやれ、と父は白旗を上げた。 「愛はある、金もある。残りは寿命だな。白穂より先に、死ぬんじゃないぞ?」 「はい!」 「希!」  二人は、しっかりと抱き合った。

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