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第七章・8

「そうと決まれば。お父さん、車を出してもらえませんか? 下見をしたいんです」 「急に、ずうずうしくなったな。何を見るんだ?」 「エンゲージリングを。白穂の好きなデザイン、見ておきたくって」  はいはい、と父はソファから立ち上がった。 「1時間後に、出発だ。それまで、せいぜいイチャイチャしとくんだな」  父はリビングから出て、アトリエへと向かった。  彼の足音が消えてしまってから、希は改めて白穂を見つめてささやいた。 「結婚してくれる? 僕と」 「いまさら何だよ、もう」 「ちゃんと、プロポーズしておきたいんだ。白穂、結婚して欲しい」 「……はい」  ありがとう、と希は白穂の頬に触れた。 「誓いのキスを」 「うん」  二人の唇が、そっと重なった。  5ヶ月ぶりのキスだが、その甘い味は変わってはいなかった。

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