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第八章・2

 母に遠慮した希は白穂の家に住むことになり、理乃は4歳になった。  比較的在宅でできる職業の両親と祖父に囲まれ、利発で優しい子に育った。  来年からは、幼稚園だ。  新しい制服に毎日袖を通しては、楽しみにしている。 「ね、お父さん。僕、新しいお友達できるかな?」 「できるよ。理乃がいじわるなんかしなければ、ね」 「いじわる、って?」 「人を差別することさ。α、β、Ω、みんな同じ人間なんだ。それを忘れちゃ、ダメだよ」 「はい」  ようやく22歳になった希の深い言葉に、白穂の父は感じ入っていた。 (まだ若いのに、しっかりしてる。いや、17歳の頃からしっかりしてたっけ)  この青年に息子を託したのは正解だった、とうなずいた。

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