69 / 76
第八章・2
母に遠慮した希は白穂の家に住むことになり、理乃は4歳になった。
比較的在宅でできる職業の両親と祖父に囲まれ、利発で優しい子に育った。
来年からは、幼稚園だ。
新しい制服に毎日袖を通しては、楽しみにしている。
「ね、お父さん。僕、新しいお友達できるかな?」
「できるよ。理乃がいじわるなんかしなければ、ね」
「いじわる、って?」
「人を差別することさ。α、β、Ω、みんな同じ人間なんだ。それを忘れちゃ、ダメだよ」
「はい」
ようやく22歳になった希の深い言葉に、白穂の父は感じ入っていた。
(まだ若いのに、しっかりしてる。いや、17歳の頃からしっかりしてたっけ)
この青年に息子を託したのは正解だった、とうなずいた。
ともだちにシェアしよう!