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45 ゆっくり、ゆっくり進んでく

 お父さんお母さんの寝てる部屋は下の階なんだって。啓太の部屋の真下じゃなくて、妹さんの部屋の真下。そんで、その妹さんの部屋はお父さんの書斎を挟んでるから、その、えっと、つまりはこういうことをする時、めっちゃでっかい声じゃないなら大丈夫って言われた。  めっちゃでっかい声って、って、二人で笑って、そんで、キスして抱き締め合って、エッチしようって。  二人で始めた。 「ちょっと冷たいかも」 「あ、それ、掌に乗っけて少しあっためるんだって、そうすると、ちょうど肌と同じくらいになるからって、っ…………ン……な、に? 急にキス」 「いや……なんか、本当に調べてくれてたんだって、思って。俺が調べたサイトには載ってなかったな、それ」  そりゃ、調べるよ。そんで、調べてくれたんだ。啓太も。 「ありがと、柘玖志、嘘みたいだ」 「嘘、じゃないし」  だってさ、男同士だから。  大変なんだ。  女の子としたこともないけど、でも男同士の方が難しいんだと思う。どのサイト見たって、男女でするのとは違ってもっと入念な準備が必要って書いてあったから。  ちょっと、その準備にビビったけど。 「指、ゆっくりするけど、痛かったら言えよ? すぐに止めるから」 「ん、そ、する。けど、できなかったらごめん。あ、えっと、するのが無理そうとかって意味じゃなくて」  一瞬、嫌がってるのかもと勘違いをした啓太に慌ててそうじゃないって否定をして、そんで、恥ずかしくて俯きながらポツリと自白した。 「その試してみたんだ。指。だけど」  全然入らないんだ。  ローションつけてても、ビビっちゃうのか、ちっとも入らなくて、そんでどうしようって。 「だから……できなかったら、ごめん」 「大丈夫。っていうか、俺は柘玖志とこうしてられるだけでもすげぇ嬉しいから」  啓太は俯いたままの俺の頭のてっぺんにキスをして、顔を上げた俺に笑った。笑って、そっと、今度は唇にキスをして、手の中でずっと温めてたローションを指先に馴染ませた。 「うつ伏せになれるか?」 「ン」  啓太も、知ってるんだ。初心者はうつ伏せの方がやりやすいんだって。  脚を開くの、恥ずかしかった。全部丸見えじゃん? って。  けど、背中にキスしてくれる啓太がなんか、胸んとこ苦しくなるくらいに好きだから、その手に任せた。 「あっ……啓太っ」  触れた瞬間、キュって縮こまりそうになるけど。 「柘玖志」 「う、んっ」  その声に気持ちがふわふわになる。  ふわふわになったらさ、一人で準備をしてみようとやってた時は全然無理だったのに。 「あ、あっ……ンンっ」  指、入ってくる。 「ぅ、ンっ」  声を喉奥のところに溜め込むようにすると、啓太の指が止まる。そんで、キスをくれる。頭のてっぺんに。 「柘玖志の髪から、俺と同じシャンプーの匂いがする」 「あっ、ンっ……ンン」  いい匂いだよね。 「柘玖志……」  名前を呼びながら、うなじに、肩に、背中にもキスをくれた。 「あっ、はっ」  そしたら、もっと気持ちがふわふわになって、また指が進んでいく。 「んんっ……んんっ、っン」  また声が詰まると止まって、キスでふわふわにされて、また指が進んでく。俺の中をゆっくりゆっくり。 「痛い、か?」 「あ……ううん」 「平気か?」 「へ、き……嘘みたい」 「?」 「啓太の指、だから、かな」  入っちゃった。これ、きっとものすごいこと。だってあんなに無理! 絶対に入らない! 指でも無理! ってなったのに。 「嬉し……」 「柘玖、」  恥かしいけど、泣いちゃいそうだった。 『ゆっくり指でほぐしましょう。焦らず。段々慣れていきます。最初から上手くいかなくても大丈夫』  よかったって嬉しくなった。準備すらできないかもって思ってたから。そんでその準備ができたらさ、ちゃんと啓太とできるんだって、今、思えてちょっと嬉しくて。あと、ほっとした。 「よかった。啓太とエッチでき、っン……んんっ、ンんっ」  また背中にキスをされながら、指が中をゆっくり擦ってく。ゆっくりゆっくり擦り上げられて、声が溢れちゃうから、慌てて啓太の枕に顔を埋めた。埋めたら、啓太の匂いがして、指をギュってそこが締め付ける。 「やぁっ」  締め付けると、ヘンテコな甘い声が溢れて、また慌てて啓太の枕を抱き締めて。 「柘玖志って、ホント……」 「あ、何? 啓太、っ、あ、指」  ゆっくりゆっくり。 「ンンんっ」  啓太とエッチする準備ができてく。身体がなんかとろけてく。 「んんっ!」  やっぱり、匂いフェチ、なのかな。 「あっ……啓太っ」 「よかった。痛くないみたいで」 「ン……痛くない、よ」  それとも――。 「俺、変なのかも」 「?」 「最初は快感を得られないこともありますって書いてあったのに」 「……」  お尻でその、エッチなことをする以外にも色々な方法で快感を得られるので、二人らしく気持ち良くなることを大事にしましょうって。 「気持ち、イイ……よ」  それとも――好きだからかな。 「啓太の指、気持ち、ぃ」  だから、こんなに気持ちいいのかな。

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