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第1話 妖狐と神様
「ひい、ふう、みい......、はあ...。今日もこれだけか」
「京蘭 様っ!まーた賽銭数えとるんか?お正月にようさんもらったじゃろ」
フッサフッサと黄色い尻尾を揺らして、妖狐――スイは、長髪を一つに結んだ男、京蘭のとなりに座った。
見たところ17、18 歳程に見える、人型のこの妖狐。 実は、とっくに250 歳をこえている。
絹の色をしたふわふわの髪で右目は隠れているが、もう片方の目を見ると、なんとも美しい翡翠 の色。
黄色と橙 の袴 を着て、首から黒と緑の玉を繋げた首飾りをさげている。
「スイ、おかえり。今日はどこに行っていたんだ?」
紫のサラサラロングを揺らして、この鈴木 神社の神、京蘭が振り返った。
「 伊吹 と山田神社で遊んできた。あのな!前に京蘭様が話してくれた、『 妖小咄1 』、あるじゃろ。あれを覚えて、伊吹に話そ思ったんじゃが...。わしはあかんなあ、全然おぼえとらんかった」
狐耳がシュンと垂れる。
「ふふ。あれを人前で話すには、ひと月練習しないといけないよ。.......っと、おお!やったぞ、スイ!人間が来たっ」
さっと立ち上がった京蘭は、美しい顔を輝かせ、パタパタと外へ出ていった。
「人間、賽銭、人間、賽銭♪」 と口ずさむ声が聞こえてくる。こんなのでも一応ここの神様なのだ。
........一応は。
「京蘭様はお金のこととなると、童 みたいになるのう。なんだか哀れじゃ」
スイは、ふう、とため息をついて、のんびりと追いかけた。
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