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テンション
サア...。
柔らかな風が頰にあたって、目が覚めた。鈴木神社の中の、広い広い和室。あるのは自分が寝ている布団だけ。そこは、スイと京蘭の家。
「おはよう、スイ」
「!!」
バッと体を起こすと、こらっと寝かされてしまった。
「急に動いちゃいけないよ。まだ完全に傷が塞がってないんだから」
「っ...!京蘭様っ、悠悟は、悠悟は生きとるよな!?」
そうだ、それが何よりも気になる。ここまでズタボロになって守ったのだ、生きていてもらわないと困る。が、早口で言うと、頭がガンッと痛んだ。
「まったくお前は...。一体どうしてしまったんだ。たった一日で、あの人間に情が移ったのか?危うく死ぬかもしれなかったんだぞ!」
(うっ...。お、怒ってるぞ...!これはかなり怒ってる...!)
「じょ、情...とは、違うが...。わしが遊ぼう言うたから、悠悟を危険な目に合わせてもうたんじゃ。そのせいでわしがもし死んでも、それは当然じゃろ」
そう言うと、京蘭は怒りを堪えるように息を吐いた。
「...飲みなさい。三日も眠っていたんだから」
冷たい水が喉に染み渡った。
「け、京蘭さ...」
「...あの人間はね、昨日もここに来たよ」
「っ本当か...!?ケガはしとらんかったか!?」
「ああ、本当だよ。お前が必死で守ったから、無傷で済んだらしい。お見舞いだって言って、食べ物なんかを持って来ていたが...。鳥居の内には入らせなかった」
「な、なんでじゃ!」
スイはむせて、水を戻しそうになった。
「スイをこんな目に合わせたんだから。だから人間は嫌いなんだ」
「悠悟じゃなくて、わしが悪いんじゃ!」
「あんなのの願いなど聞くんじゃなかった...。500円につられてしまったよ」
「京蘭様のあほ」
「あほで結構」
ふう、と一息ついて、京蘭は懐から紙を取り出した。
「これはあいつから。手紙だと言っていたよ」
「手紙!」
バッとその手から奪いとって、いそいそと封を切る。
「えーっと、スイ様へ...」
『この度はご迷惑お掛けした上、僕の命を救って頂き、ありがとうございました』
「水まんじゅうがお好きと聞いたので、今度持ってきま...おおっ、やった〜!水まんじゅうじゃ、やったー!」
ピョンピョン跳ねて喜びの舞をしようとしたが、傷が痛くて出来なかった。代わりにに、とびっきりの笑顔を見せる。
「なーっ、京蘭様!?水まんじゅう受けとるくらいいいじゃろ?わし、そしたら一日で元気なるもん!」
「......。では、私が受け取ってそれをスイに渡そうか」
スイが膨れ顔で抗議しようとした時。ごめんくださいと声がした。
「平口です。お見舞いに来ました」
ふすまの向こうに、影が一つ。スイはぱあっと顔を輝かせ、京蘭は頭を抱えた。
「また来たか...。まったくタイミングの悪い」
「みっずまーんじゅー!!」
体を起こして、両腕を傷が悪化しない程度にバタバタ振る。
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