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しりとり
「ね、しりとりでもしませんか?」
悠悟が小さく手を挙げて提案すると、二人は首を傾げた(ふわおは首が無いので目をパチクリさせた)。
「しりとり?なんじゃそれ、食べ物か?」
スイの鼻がヒクヒク動いたので、思わず笑ってしまう。
「あはは、しりとりは遊びですよ」
「あそび!」 「ふわ〜!」
「俺が、例えばりんごって言ったら、次の人は『ご』から始まる言葉を言うんです」
「ご...ごぼー!」
「ごぼうですね。んじゃ、次ふわおは、『う』から始めて」
ふわおは悠悟とスイの周りをしばらく浮遊して、一生懸命考えた。そして、パッと目を輝かせて、キラキラ笑顔になった。
「ふわ!」 「あー、なるほどなあー」
「?スイ様、ふわおは何と?」
「にしし、うーちゃんって言っとる」
「う、うーちゃん...?誰っすか」
「うーちゃんは精霊じゃ。色んなところをうろうろしとるから、悠悟もその内会えるじゃろ」
「へ、へえ...」
またひとつ新しい種族の知り合いが出来そうな悠悟であった。
「あ、でも、しりとりは最後に『ん』がついたらダメなんです。だから、今のはふわおの負け」
途端、ふわおの白いオーラがグレーがかってしまった。プルプル震えて、泣きそうだ。
「ふわ...」
「ふわお、一回出来んかったくらいで諦めるな。わしも一緒に頑張るから、もう一回やろう。な?」
拳を握りしめ、真っ直ぐふわおを見つめるスイ。
「...ふわ!」
ふわおはその言葉にやる気を取り戻した様子だ。二人の間には熱気が有りあまり、眩しいほどだった。
(...ガチかよ!)
――一連の流れをじっと見ていた悠悟は口を挟みたくて仕方なかったが、意気込む妖精と妖狐が可愛らしかったので黙っておいた。
「悠悟、安心してくれ。ふわおはもう大丈夫じゃ。さ、早く始めよう!」
ポフンッと尻尾で背中を叩かれて、悠悟は慌てて言葉を考えた。
「あー...、じゃ、『ふわお』で」
いきなり自分が出てきて、ふわおは嬉しそうに宙を舞った。
「お...おむすび!」 「ふわ!」 「ビー玉って言っとる」
「えーっと、マジ卍」
「ま...なんじゃって?」
「マジ卍っスよ」
「そ、そうか...。じ...じ、神社!」
悠悟との間にかなりどころでは無いジェネレーションギャップを感じたスイだったが、それを表現する語彙を持ち合わせていなかったので黙っておいた。
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