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不穏な

さて、その後。しりとりだけでは飽き足らず、駆けっこや花かんむり作りもした。毎日山を駆け回っているスイが一等賞を勝ち取り、悠悟はゼエハア息を荒げた。高校では体育祭のアンカー常連だった彼だが、勉強漬けの毎日を送る内に体がなまってしまったようだ。 ふわおはというと、駆けっこがなんたるかを理解していなかったらしく、のんびりと空中遊泳していた。 そして、花かんむり。少女じみているかと思われるが、これを一番楽しんだのは悠悟だった。 「違います、スイ様。その葉っぱはこう、下から持ってきて...」 「む、こうか...あっ、千切れた」 ブチッと思い切り茎を折ってしまい、スイは落胆した。 「ちぇ、これ難しい。悠悟は上手いなあ」 褒められて、悠悟は照れたように笑った。 「へへ、こんなの簡単ですよ」 「......」 手先が不器用なスイなので、悠悟の一言はかなりグサッと来た。察したふわおが、無言で頰を擦り寄せてくる。 「あ、そろそろ帰らないと。今日友達の誕生日なんで、お祝いパーティーするんっスよね〜」 「そ、そうか。それは大変だ。早よ帰って、お祝いしてやれ」 いつの間にやら空は茜色。妖精達も居なくなっている。 「ふわ?」 ふわおが寂しげな声をあげ、悠悟に近寄った。 「ごめんなあ、ふわお。俺もう帰らないと」 「ふわ...」 「ふわお、悠悟に挨拶せえ。お別れじゃ」 「ふ、ふわっ...!!」 「悠悟、ふわおは『元気でね』って言っとるぞ」 「あー...うん、元気にしとく」 (永遠の別れみたくなってるなあ) 夕焼けもあいまって、感動の別れ感はより際立った。 「じゃあな、ふわお」 挨拶をして、カラカラと扉を閉める。 中の自然が信じられないくらい、扉の外はいつも通りの社の中の廊下だった。 「スイ様、今日は...というか、今日も楽しかったです」 「ふへ、わしもじゃ」 長い長い廊下を歩きながら、話す。 「悠悟、明日も来てくれるか...?」 「もちろん。..あの、スイ様」 そこで悠悟は目をそらし、少し頰を赤らめて切り出した。 「明日...。その、柚香も連れてきて、いいですか?」 「柚、香」 一度だけ見た、悠悟の彼女。 その名前を聞き、スイは何故か黙りこくってしまった。 「あの、ダメですよね、やっぱ。すいません」 が、申し訳なさそうな悠悟の顔を見て、慌てて答えた。 「い、いい、全然いい。わしも柚香に会いたい」 「わ、マジっすか!よし、柚香喜ぶぞ!」 ガッツポーズする悠悟。 「彼女すっげー怖がりなんスけど、スイ様の話したら目キラキラさせて。視えるか分からないけど、会いに行きたいって言ってたんです!」 「ああ...。それは、嬉しいな...」 スイは、心にモヤがかかった気分だった。だけど、原因はてんで分からなかった。

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