27 / 29
妖狐と少女
「あ、スイ、様……?」
「………」
柚香と、目が合った。透き通った大きな瞳が、確かめるように見つめてくる。
逸らせない。もう逃げられない。
(京蘭様は、本当に)
本当に、酷いことをする。
「スイ様」
近づいてくる柚香。
思わず、後ずさってしまう。砂利が、小さく音を立てた。
京蘭が、じっとスイと柚香の様子を眺めている。冷たく、でもどこか面白がっているような目だ。
「スイ様」
「っ、寄るな!!」
こわい。柚香のことが、とてつもなく怖かった。
「スイ様って、こんなに綺麗だったのね…」
その純粋さに、自分に勝ち目はないと言われているような気がするから。
「本当に、綺麗」
柚香は、スイにも優しく接するだろうと、分かっていたから。
だから、こわくてこわくて仕方がなかった。
ともだちにシェアしよう!