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妖狐と少女

「あ、スイ、様……?」 「………」 柚香と、目が合った。透き通った大きな瞳が、確かめるように見つめてくる。 逸らせない。もう逃げられない。 (京蘭様は、本当に) 本当に、酷いことをする。 「スイ様」 近づいてくる柚香。 思わず、後ずさってしまう。砂利が、小さく音を立てた。 京蘭が、じっとスイと柚香の様子を眺めている。冷たく、でもどこか面白がっているような目だ。 「スイ様」 「っ、寄るな!!」 こわい。柚香のことが、とてつもなく怖かった。 「スイ様って、こんなに綺麗だったのね…」 その純粋さに、自分に勝ち目はないと言われているような気がするから。 「本当に、綺麗」 柚香は、スイにも優しく接するだろうと、分かっていたから。 だから、こわくてこわくて仕方がなかった。

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