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赤ずきんの檻 15
「ぉ、が 」
「どこを触って欲しい?」
唇を啄みながら意地悪げに言うのは、どこを触って欲しいかわかっていての質問だ。あかが焦らされ、欲情しつつも戸惑い出す言葉が聞きたくて仕方ない、そんな声で尋ねてくる。
「お───」
するりと出掛けた言葉がつっかえる。
自分が言いかけた言葉に我に返ったあかが慌てて自分の口を押さえて身を引いた。
顔を赤く染め、涙を溜めた目で大神を見て首を振る。
「言わないと分からないな」
「 っ 」
促されるままに言葉を紡ごうとして出来ず、けれど大神の余裕のある顔を見てみると譲歩する気はなさそうだった。あかは大神の首に手を回し、他に誰もいないと言うのに可能な限り声を潜めて大神に触れて欲しい箇所を囁く。
「………、…」
声よりも鼓動の音の方が大きくて、大神は不満そうに片眉を上げて見せた。
戦慄く唇を噛みしめ、あかはぶるぶると首を振ってこれ以上の言葉は出せないと示して見せる。
とん……
「ァ っ 」
二人の間で捏ねられ起立したままだったその先端を、固い指先が叩く。
「 い、 ン……っ あっ あ 」
とん とん と敏感な先端をリズムよく叩かれ、噛み締めた唇の間から意図しない喘ぎが溢れる。
先端を弄る指先がにちゃりと水音を立て、糸を引いて卑猥に震え始めると、大神の首に回した手に力が籠もっていく。
「 、おね が。 ち ……ぃじめて」
啜り泣くような懇願は、大神にとってはまだまだだったけれど、男っぽい唇に笑みが自然と浮かぶのを止められなかった。
「ぅ、わっ 」
部屋を満たす濃厚なΩの匂いは、視界を曇らせそうな勢いで、運転手の男は扉を開けた途端声を上げてその場で蹈鞴を踏んだ。
ここに入って、正気でいられるだろうか……?
そう逡巡するも、大神が呼べば行かないわけにはいかない。そろそろと足を踏み出し、極力息を吸わないようにしてソファーの方へと回った。
「 勘弁してくださいよ。俺これでもアルファ因子持ちなんですよ」
視線をどこへやったらいいのかわからない運転手は、大神に向きはしたが視線は窓の方へとやる。
雲が晴れて空が青い と、全然関係のないことを考えて気を逸らそうと無駄な頑張りをしてみた。
「ひ、ぃ ン、ンぁ、やぁ もっ と、 奥、 き てぇ、 ちょ らい あー…… 」
ひっきりなしに上がる声に、運転手は最後の手段とばかりの耳を塞ごうか思案顔をしてから、結局咳払いを一つして聞かなかったことにすると決めたようだった。
「んっ、 せめて終わってから連絡ください」
「終わってからじゃあ手遅れかもしれないだろう?」
Ω用のアフターピルの目安時間は12 時間だ。それが手遅れということは、この行為がそれ以上続くと暗に示しており、思わず大神を見る目が冷たくなった。
「絶倫ですね」
「違う、初ヒートだ」
「あっ、あ あー……そうなんですか」
統計的に、Ωの初めてのヒートでの受精率は異常に高いと言われている。それならば納得だと、頷きながら運転手は手の中の小さな紙袋を手渡した。
大神は器用に片手だけでそれを開けると、やはり手慣れた風に片手だけで中の薬を取り出す。
「口を、開けろ」
そのまま溶けていきそうな表情のあかは、それでも大神の差し出す薬を怪訝に思ったのか、一度素直に開きかけた唇を引き結んで首を振った。
「アフターピルだ、毒じゃあない」
「あー……?」
惚けた顔で首を傾げたあかの腹を、大神の手が覆う。
あかの薄い腹は小さくて、大神の手で潰せてしまいそうな程だった。
「孕んだら大変だろう」
「は、ら 」
ぽつんと呟いて、あかはいやいやと頭を振り、大神の太い首に腕を絡めてキスを強請る。
「やぁ 、おーがみさんの、 子供、産むぅ 」
煙草のせいでざらりとする舌を欲しがり、絡め、唾液が欲しいと唇を舐める。
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