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雪虫 34

 怒鳴ったせいかまたくらりと視界が回ったが、雪虫に心配をかけたくなくて笑って見せるけれど、その表情は晴れず、涙は止まらないし辛そうな表情のままだ。  それが申し訳なくて、根気強く頭を撫でる。 「ごめんな?」 「ん  」  さらさらとした金の髪が指に絡む。  顎以上に、胸がズキズキと痛んで、オレが泣かせる原因になってしまったことが雪虫を苦しめていることが、何よりも辛くて。 「ホント   ごめん」  もっと他に気の利いた言葉の一つでも言えたなら、雪虫をもっと安心させてあげられるだろうけど、ただただ謝罪しかできなくて…… 「しずる、大丈夫  わかってるよ」  動けないオレに寄り添うように、オレの隣にころりと転がってきた。  真横にこうやって寝転んだことがないことに気がついて、面映い気持ちで見つめ合う。  嬉しそうにオレを見て微笑まれると、胸がぎゅっと苦しい。 「心配だから ここで寝てもいい?」 「ここで⁉︎」  見える範囲で判断すると、ここはオレの使っている部屋だ。オレ一人が寝るためだけに使っているため、ベッドはシングルの小さいものしかない。 「狭いぞ?」 「うぅん、大丈夫」  雪虫はだいぶ小柄だから、ゆったりとは行かないまでも、寝るくらいなら平気かも?  目眩に負けないようにジリジリと壁の方にずれて、雪虫側を広く取る。 「これなら寝やすいだろ?」 「ん。  腕!」 「腕?」  差し出した手をぱたんと布団の上に下ろすと、それを枕にしてもそもそと居心地を整える。  腕枕だ!  さらさらと零れた髪が二の腕に当たるのがくすぐったくて、飛び上がりそうになったのをぐっと堪えて、雪虫の顔にかかる髪をそっと払った。 「あったかいね 」  モゾモゾと擦り寄せられた足は冷たくて、しっかりこっちに引き寄せて足を絡めた。 「ほら、温めてやるから」 「うん!」  オレの足に、つるつるの雪虫の足が絡む。  性差を感じさせないような、直線的な薄い体は全体的にひんやりとしていて、このまま風邪を引くんんじゃなかろうかと、オレの体温を全部上げてもいいと思える。 「十分元気ですね。下にいますので、何かあれば知らせてください」  そうだった!直江がいたんだった……  気恥ずかしくてもごもごと返事をするが、直江は気にした風でもなくあっさりと出て行ってしまった。  腕の中に雪虫が転がっているは嬉しいが、つい二人きりの距離感が出てしまうのは照れ臭すぎる。 「何かあったすぐに言ってね。直江呼んでくるから」 「ん、頼りにしてるからな」 「たよりに?」  頷いてやると、雪虫は照れ臭そうに微笑んだ。

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