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雪虫 36
ゆっくりと肋骨の感触を確かめながら指を上げていくと、指先に触れる皮膚の感触がふっと変わった。
「ん 、ン」
難しい表情で唇を引き結ぶが、拒否する様子はなくて。
その形に沿って手を動かすとぷくりと膨れた尖りを見つけた。
「ぁ、ん 」
鼻に抜けるような声と、指の間でしっかりと雪虫が感じている証拠が育つ。
ぷっくりとした弾力のある、滑らかなソレを、指先で丁寧に転がしていく。
「ぅ、あっ 」
「痛かった?」
自分の声に驚いたのか、今度は自分の口を押さえてしまった。
小さく漏れる声が聞きたかったのに、
興奮して赤くなった唇が見たい、
雪虫を
このΩを
「は……? なに 」
ざわ と全身が総毛立つ。
自分の思考が、花の匂いに塗りつぶされるのを感じた。
このΩを啼かせて、
喘がせて、
噛んで、
番って、
孕ませたい。
「噛 ん 」
孕ませて、自分のものだと、刻み付けたい!
「 噛みたい? 噛む?」
オレの内心の渇望なんて知らず、さらりと髪を揺らして雪虫が背中を見せた。
薄暗い部屋に白く浮かび上がるような頸に、腰の奥がゾクゾクして……
「 ゃ、駄目だって 」
「番にしてくれるって、言ったよ?」
熱い、
「 ヒ、ヒートの時に、噛まなきゃ 」
熱い、
「それに、 もうちょっと体力、つけて 」
白昼夢を見たかのような視界の巡りと、心配そうにオレを見上げる雪虫を見て、ソレを噛んだらどんなにか気持ちいいだろうかと疑問が首を擡げた。
白い、首。
「ゃ、あっ!何やって 」
小さな悲鳴と、ギリギリと歯の立てる音が骨を伝って脳に響く。自分の口の中には血の味が広がっていて、歯に当たる腕にどれだけ深く噛みついたかを教えていた。
ギリギリと自分の歯が腕に食い込むのを 止められない。
こんなものじゃなく、雪虫の柔らかで白い首を噛みたいと、頭の奥で何かが囁く。
「血、血 出てる」
「違う、大丈夫」
噛みやすいようにか、αの歯は鋭い。
自分の腕の皮膚ですらこの状態なのに、衝動に突き動かされて思うさまに雪虫の首に噛み付いていたらと思うとぞっとする。
「 ごめん、ちょっと、なんか 」
高熱を出した時のような現実味のない視界が揺れる。
犯したい
先程までと一変した雰囲気に、雪虫は戸惑って泣きそうで。
「 駄目、 これ、 直江さ を 」
なんとか息を整えて気持ちを落ち着かそうとしているのに、意思に反して血塗れの手が雪虫を押さえつける。
犯したい
力を込めたら折れてしまいそうな体を、鷲掴む手がコントロールできなくて……
熱い、
「 呼ん で 」
熱い、
身体中が沸騰しそうに熱い!
熱が逃げなくて、落ち着こうと深く息をする度に雪虫の匂いが肺の奥まで入ってきて……
熱で思考が回る。
「ちょ 離れ、て」
この弱い生き物を蹂躙したい と。
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