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ひざまずかせてキス 26
「 その辺にしといてやったらどうだ?」
いつ聞いてもその声は他の音を切り裂くように聞こえてくる と、ドアを開けた大神の方を見た。
「大神さん 」
「まだ言い足りないんですけど 」
不服そうではあったけれど、さすがに大神相手ではすがるも強く出れないのか、むぅっと口を引き結んで渋々とオレから離れた。
「すがる、報告は受け取った。ご苦労だったな、休むといい。直江、帰るぞ」
「はい!」
助け舟に飛びつき、不満を溜めている顔をしているすがるを背に部屋を出た。
どれくらい眠っていたのだろうかと腕時計を見ると、二時間ほど経過しているようだった。すがるはいつからいたのか、起こせばいいものをオレが起きるのを待ってくれていたのだと思うと、憎み切れなかったりする。
「あの子はここに預ける事にした」
「SNoWですか?思ってたよりも小さかったですね」
「そうだな。他に移すよりも、つかたるに居る方が安定するだろうとの判断だ」
なんだかんだと煙たがったりもするが、大神は瀬能の言葉は素直に受け入れる傾向にある気がする。
古くからの知り合いだと言うけれど、全く違う性格でよく長続きするものだ。
「医者としては信用している」
ちらりと見下ろされ、見透かされたのだと分かって戸惑った。
「 そ れは、人としては信用してないって事ですか?」
「 さぁな」
小さく唇の端が上がるのは、気にかけていたSNoWの事がひと段落したからだろう。
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