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ひざまずかせてキス 30

 腰から温めるようにしながら両手がゆっくりと背骨を伝って肩甲骨まで来る。  絶妙な力加減で押されるツボに、思わず小さな声を上げてしまった。 「お?きもちー?」  丁度いい圧迫感は癖になりそうな程だ。 「  っ 、ちょっと だけっ」 「あーはいはい、ちょっとだけね。服脱いでくれたらオイル使えるのに」 「ぬるぬるは絶対嫌だっ」 「はいはい、女王様のおっしゃるままに」  そう言いつつ、掌底で肩甲骨を動かすように押されれば、気持ち良さに思考が霞みそうだった。  マッサージをさせろとうるさい相良を黙らせる為にさせてはいるが、これは侮っていたかもしれない。  ちょっとこれは……気持ちいいぞ…… 「  っ、あ」  摩擦で相良の手も温もったのか、大きな手が体の冷えた部分を覆うようにして温めてくると、なんとも言えない安堵感と気持ち良さにほっと体の力が抜けた。  この男に体を触られてリラックスする日が来るなんて思いもしなかったが…… 「仰向けになって」 「んー……」  促しに抵抗する事なくごろりと転がって体勢を変えると、相良が嬉しそうに笑っている。 「  なんだよ 」 「素直なナオちゃん、可愛い 」 「はぁ?」  抗議を上げようかとも思ったが、手が鎖骨の辺りを揉み始めたので何も言わずに口を閉じた。  脇を通り、足の付け根、太腿、脹脛、適当に揉むんじゃなかろうかと言う最初の考えを裏切り、相良の指は肉体をよく知っているように筋に沿い、的確にツボを突いてくる。 「んっ  ん   っ!」  内太腿を揉まれると流石に妙な声が漏れて……  咄嗟に口を押えるが相良は聞き逃してはくれなかったらしく、真剣に体を揉んでた表情を崩して覆い被さってきた。 「な、 」 「後でまたしたげるから、先にすっきりしちゃうとかどうよ?」 「  っ、こんな所にきてまでっ」 「じゃあ何のために連絡してきたんだって話だろ?」  ぐっと言葉を詰まらせて睨みつけてやると、ヘラヘラと笑い返されて……脱力感が否めない。 「お前はオレを脅してるんだろうが」  脅されている方がマッサージを受けている事が異常なのだと、自分の言葉で気が付いた。 「ああ、これだっけ?」  胸のポケットに無造作に入れられているUSBメモリに、思わず悲鳴が上がりそうになって飲み込んだ。  ちょっと前屈みにでもなれば転がり落ちそうな場所に入れて、しかもバイクで走るなんて正気じゃない。 「お前はっ扱いに注意しろよっ‼」 「大丈夫だってぇ。俺だってナオちゃんのエロいお尻とか皆に見て欲しくないしー」 「じゃあっ返せっ!」 「嫌だよーん」  イラっとして目の端に見えていた相良の脛毛を鷲掴んだ。 「えっちょっやめっ  !それだけはっ!ダメ!ちょ  っ」  ぶちぶちっとあまり好ましくない感触と音に辟易しながら力を籠めると、わぁわぁと騒いでいた相良の声が悲鳴に変わって、やがてそれすらも出なくなった。

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