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ひざまずかせてキス 31
ベッドの上で涙を滲ませて震えている本体に向けて、ふっと手の中の毛を飛ばしてやる。
「ぃ ────ったい!」
「次は股間の毛を毟る」
「微妙に怖い脅しってなんなの!」
「その次は鼻毛だ」
「だからなんで毛を毟るの⁉」
「出産の痛みが二百五十万ハナゲらしい。お前は何本あるかな?」
「それジョークだからっちょっやめっホントに!引っ張んなってっ あああああああああっ」
ふっともう一度手の中の毛を吹き飛ばし、次は鼻毛かと思案はしてみたが、これ以上汚い物を散らすとホテル側に迷惑をかけるかと不安になり、相良の頭を押さえつけていた手を離した。
痛みによる生理的な涙を流す姿に、勝った!と言う気になって唇の端を上げる。
「 ちょ まじか まだらになってるし 」
涙目で下着の中を確認した相良は、そう呻くと今度はケタケタと笑い出した。
気でも触れたかと冷たく片眉を上げて睨んでやったが、ただただ可笑しかったらしい。腹を抱えて転げまわる姿に馬鹿らしくなって、どうしてこいつの毛を毟っているんだろうかと現実に引き戻された。
大神に体毛の事をからかわれたせいかと思うも、あまりにも下らなさすぎる。
思い出したように馬鹿な事をする と言っていた大神の言葉をふと思い出して、こう言う事かもしれないと四肢を放り出して倒れ込んだ。
「ナオちゃん酷すぎない?」
「なんだ、生きてたのか」
「俺、不死身だから!」
覆い被さってくると、さっと天井の明かりが遮られて自分に影が落ちてくる。
大きな相良の影はやはり大きくて、その中にすっぽり入ってしまえるんじゃないかとふと思わせた。
「エッチしよっか」
「 データを。そうしたら好きにしていい」
掌を向けてやると、珍しく真剣な顔をしてずいぶん長い間悩んでいるようだった。
「 データを渡しても、俺とエッチしてくれる?」
は?と返そうとした所を頬ずりされ、言葉が出ない。
「キスは苦手なんだろ?」
「 っ、ああ」
「だからほっぺでガマンする」
「我慢する事なんて 」
そう言葉が口を突いて出たのを止められなかった。
軟体動物のような舌に唾液が絡まり付いて……それで体内を犯されるなんて嫌悪以外の何でもないのに……
「でも、セックスはさせて」
耳元で囁かれた言葉はそれ自体に熱があるのかと思えるほど熱く、触れた耳が急に熱を持ったように思えた。
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