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落ち穂拾い的な 報告
「スーツ で、いいよな?」
番になったことを鷲見たちのご両親に黙っていようと思えばできた。
コレはオレの首にしかないし、二人が成人する数年を隠し通せれば気まずい思いはしなくていい。
けれど、
「カッコイイ!」
「オトコマエ!」
そう言ってこちらを見て笑ってくれる二人と、そう言う後ろ暗い関係を持ちたくなかったから……
今日は、二人のご両親に番になった報告と、パートナーシップを結ぶお願いとをしに行く。
「ん 」
「心配してるの?」
「そりゃ……オレだったら、いきなり来られてびっくりするし」
たぶん、反対しちゃうだろう。
それに、やっぱり、その、生徒に手を出したってのは、先生としてはちょっと……ご法度だってのが根底にあるから。
────しかも、二人の家が……ちょ やめて、塀の端が見えない日本家屋とかっ本当にっやめてっ‼
「せんせー?どうしたの?」
「入り口こっちだよ?」
入り口であって、玄関ではない、と?
いやぁーあの、ちょっと、これはオレには荷が重すぎじゃないかなぁ?
門から続く飛び石と、きちんと剪定された木と池の錦鯉と…… は?
「ただいまー。お父さんたちどこかな?」
「ただいまー。向こうにいる?あとでお茶お願い」
二人がしれっと声を掛けた、明らかにお手伝いさんとかそんな感じの人に慌てて頭を下げて……
逃げちゃダメかな?
こっちはこじんまりとした生活しか経験がなくて、門をくぐってこんなに歩くことも、庭に魚が泳いでることも、石灯篭とかも!そんなのとは全然関係のない生活しかしてこなかった身だ。
場違い感半端なくて居た堪れないんだけどっ!
「あ、の、さ 家、広くない?」
「家族が多いからだよ」
「しょうがないよね」
大家族と、家の大きさは関係ないぞ。
「お兄ちゃんと弟がいるんだよ」
「そうそう!だから大家族だよね」
お願い……そう言う情報はもっと早く教えて と、言うか、聞いておくべきだった。
案の定、この屋敷にふさわしく、二人のご両親も見るからに一般家庭の親と言う感じではなくて。父親の方は圧が半端ないし、母親の方のキラキラしたマダムオーラが眩しくて仕方ない。
PTAとか懇談とかで会うどの親とも違った雰囲気のせいか、対応マニュアルが真っ白で何を話していいのやら……
ホント、蛇に睨まれた蛙の気分だ。
そして案の定 二人と番になったこととパートナーシップのことを切り出すと渋い顔になってしまい、二人が何か言うも遮って黙りこくってしまった。
そりゃそうだ、まだお茶をかけて追い出されないでご両親は我慢してくれている方だろう。
深く下げたままの頭が怖くて上げれず、今にも震えだしてしまいそうだ。
やっぱり反対されて終わりなのかと唇を噛むと、きゅ と膝の上の拳が温かな物に包まれて……
オレの手を包む凰珀と出鳳の指先も汗ばんで冷たくて、二人も緊張しているのが分かった。
『お二人ともまだ学生ですか?』
『 そう、なんです』
『パートナーシップは結べますよ』
『でも、正直 許してもらえるとは思えなくて』
『じゃあ魔法の言葉を教えましょうか?』
この手を離したくない と強く思った時に思い出した言葉があった。
「──── 運命だったので!」
突然上げた声に四人がびっくりした空気が流れて、それに勢いを借りて顔を上げた。
父親は二人と似てる!
母親は優しそうだ!
何がかは分からないけどだから大丈夫‼
「運命の番だったので ご両親に納得していただく前にこんなことになって大変申し訳ないとは思うのですが、 「まぁ!本当に?やだ!あなた!運命の番ですって!」
オレの言葉を遮ると共にパシンパシンと乾いた大きな音は、母親が父親の背中をなかなかの力加減で叩いているからだ。
先程まで厳しい表情だった顔が綻んで、母親の目がキラキラしている。
『え それでどうにかなるんですか?』
『ええ、九割強はこれでいけます。つかたる市は運命の番に出会いやすいとは言え、やはり確率は高くないので憧れるんですよね。その言葉を出されて絆されない人の方が少ない印象です』
『ええー……あ、でも、ちょっと分かります』
『でしょ?やばいなーと思ったら運命の番です!って言ってみてください』
バッシンバッシン背中を叩かれた父親が、砕けてしまった緊張感を拾い集めるのを諦めるように溜息を吐き、
「運命ならしょうがないか 」
そう小さく呻いた。
瀬能先生、人生経験少なそうなんて思ってごめんなさい。
お陰で何とかなりそうです。
END.
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