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青い正しい夢を見る 13
かちん と歯が鳴り、身が竦んだ。
振り払った筈の男の手がまた再び僕に伸ばされてきて、逃げようとしたのに体は全然言う事を聞いてくれなくて、その場から動き出せないままだった。
「 いや っ」
噛み締めた唇から血の味がした。動く箇所を動かして懸命に抵抗したせいか、どこかが男に当たって小気味よい音を立て……
「 ひっ」
こちらに向けられる意識に混じる憎悪の濃さに眩暈がする。
「 うるさい 黙って、股を開け 」
絞り出された低い声に乗って、きつい牡のニオイがした。今までに嗅いだ事のない、野生の獣のような男の臭いだった。
理性で押さえていた何かが引きずり出され、追い立てられて、彼から逃げようとしていた筈なのにその服に手が伸びて。
もどかしい
恐ろしい筈なのになぜだかそう言葉が浮かぶ。
皮膚を隔てる物が、もどかしい!
「 ────っ、あ は、ぁ 」
男性から、より一層きつい臭いがした途端、腹の奥が攣れる感覚がして……
尻の間にぬるりとした感触が広がって、後唇が濡れて綻んだのが熱で熟れた頭でも理解できた。
「な に、やだ、やだ、 なに これ 」
男に引っ張られて体が揺さぶられる度に雫が内太腿を濡らす感触がする。
「や、め 違う、ちがうん で 」
「黙れっ」
一際大きな声を出された瞬間、くっと言葉が喉に詰まった。
吐き出そうとした言葉が出なくて、ひ と空気の漏れる音だけが喉を通っていく。
荒々しい腕が破かんばかりの勢いで服を引っ張り、抵抗する力のない僕はそれに釣られるがままに翻弄されて……
押さえつけるのではなく、叩きつけるように床に転がされた僕の体は動かず、あの年老いた医者の指とは違う大きくて太い指が探るようにナカを抉ってくる。
気持ち悪くて堪らなかったはずなのに、奥深くまで差し込まれると体中がゾクゾクとした快感に満たされて、自然と腰が浮いて揺れた。
「 あ ────っ 」
小さな細長い、発情した猫のような甲高い声が自分の喉から零れているのだと気づいた時には、熱くて太い杭が指の代わりにソコに宛がわれた瞬間だった。
はっと我に返るような、身の竦みに一瞬だけ脳味噌が冷えて、
「 伊藤 く ん」
ぽつんと漏れた言葉は意識から出たものではなかったけれど、でも記憶の中の、あの夕日に照らされた彼のはにかんだ顔を思い出させるには十分だった。
突然、どうして彼の名前が浮かんだのか……
彼とはただの同級生で、
話したのも委員会が初めてで、
同じクラスになった事もなかった。
でも、廊下ですれ違う一瞬に、彼の微かな香りに気を取られていて……
そんな関わりしかなかったのに……
ああ、僕は彼が好きだったのか な ?
小さく浮かんだそんな疑問を裂くように、ミシリと体の奥が痛みを訴えた。
引きずり戻された思考を痛みは容赦なく蹂躙して、何度も止めてと叫んだと思う。
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