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花占いのゆくえ 11

 理解できない と顔に出ていたのか、少しだけ困った顔を見せた。 「僕、ベータだから」 「……」 「あの、僕、ベータです、だから絶対に運命の番ではないです  」  はっきりとわかりきったことを繰り返されて、オレは返事に詰まる。 「オメガに近いですけど。だから、  」    運命の相手ではない。  それは薫にずっと感じていたことだ。  堪らなくいい匂いだし、かけがえのない存在だと分かっていても、運命じゃない。 「期待したくないので、ダメなら早めに言って欲しいです」  ミナトがこうやって何人のαに会ったのかは分からなかったけど、その全員に拒絶されて来たのは雰囲気で分かる。  特に七十代の と言っていたαは、まだバース性への差別の激しい年代の筈だから心無いことを言われたのかもしれない。  αのせいで小さく身を縮めてしまっているミナトの姿が、βだからと肩を竦めていた薫と重なって見える。  こちらに背を向けた薫はもう振り返ってくれないけれど、ミナトの目はオレを映してくれていて、それがそわそわと胸の内をくすぐった。 「  期待させたくは、ない けど   もう少し、いろいろ話が出来たらなって、思います」  我ながら自分勝手で酷い返事だと思う。  ミナトの言葉は丸っと無視だし、自分の都合しか考えていない言葉だ。現にミナトは困惑の顔をしてから、難しそうに眉をしかめてしまった。 「ベータだってことで諦めて欲しくなくってって  っ、余計ダメですよね、勝手言っちゃって  」  これ以上言い募ってもどんどん自分の勝手さだけがバレるのが目に見えるようだったので、今回のマッチングは流れたものとして急いで立ち上がろうとしたオレの腕をミナトが止める。 「僕が、 今回は、僕の方が大人なので、しょうがないです。  それでいいですっ」  力いっぱい握っても全然痛くない手が腕を掴んでいて、そろそろとオレの表情を窺うけれど視線が合いそうになるとぱっと伏せられてしまう。  黒髪の間から見える耳が赤くて、怒らせたかと言葉に詰まる。 「  期待はしません……けど、諦めないことにします 」  小さなその宣言の意味をオレは掴み損ねてしまって、聞き返せる雰囲気でもなかったからそのまま何もなかったようなフリをした。  本屋には……時々来る。  漫画の新刊が出てたりとかしたら だ。それ以外ではあまり来なくて、薫の参考書の買い物に付き合わされる時は退屈で仕方がなかった記憶がある。  ミナトは芸術系の大学に通っているのだと、何度かした電話の中で教えてくれていて、だから今日もそのジャンルの書架の辺りにいると連絡が入っていた。 「コンピューター  で、次、次、芸術  」  と と と指で書架に書かれた文字を指して行くと、広い店内の奥の方にその一角を見つける。  漫画や雑誌は店の入り口に近い方にあるから、こんな奥まで来ることは初めてかもしれない。

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