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花占いのゆくえ 12
邪魔するのもアレだな と思って、そっと書架の端から顔を出して覗いてみると、真剣な横顔のミナトが一冊の本を手に取るところだった。
表紙は細かい模様が入っているのは見えたけれど、題名は漢字が多すぎてここからじゃはっきり読むことが出来ない。なんの本かは分からないけれど、分厚さと題名の読みにくさから難しそうな本だ と言うことだけはわかる。
少し神経質な印象を受ける眉を少し歪めてその文面を食い入るように見てから、あっと破顔して頷いてからページをめくる。
次は少し唇を突き出しながら……やはり難しいのか眉が歪んで行く。
一人で本とにらめっこしながら百面相するミナトに、なんだかくすぐったさを感じて少しの間、そうやって本を立ち読む姿を眺めてみた。
「 ────って、喜蝶くん⁉」
その後、何ページか読み進んで納得したのか、その本を書架に戻そうとした瞬間にオレの視線に気づいたらしい。
はっと目も口も丸くしてこちらを見た後、急に真っ赤になって蹲ってしまった。
「ミナトさん、どしたの?」
なんて、聞かなくてもわかっている。
百面相しながら本を読んでいた自覚があるんだ。
「声 かけてよっ」
カーディガンの長袖で顔を覆い、こちらには隙間しか見せてくれないけど、耳はカバーできていないから真っ赤なのがバレバレだった。
「だって、ミナトさん一生懸命だったから」
「 っっだから!それを見ないでって」
「だってー、お互いのことを知って行こうって約束したよ?」
わざとらしくこてん と首を傾げながらしゃがみ、ミナトの腕をそっと退かしてやると泣きそうになっている目がオレを見た。
「言ったけど、さぁ」
「じゃあ、しょうがないよね?」
「しょうがないけどさぁ」
でもでも と言うミナトに手を差し出して立たせる。
「欲しい本は見つかった?」
ミナトが書架に戻した本の背に目を遣ると、『前衛芸術学の為の理論』と書かれていて、どんな内容なのか聞こうかと一瞬思ったけど、説明されてもわかる気がしなかったので結局見なかったことにした。
芸術関係は、オレには鬼門だ。
「うーん……図書館で借りようか迷ってるところなんだけど……」
「じゃあ、買い物しながら考えようよ」
棚の上をさまようミナトの視線が、隣の『写真』と書かれた書架に移る前にその場を離れようと手を引っ張る。
表情的にはまだ見たそうだったけれど、その視線を遮るように前に出て「ね?」と押すと、眉尻をちょっと下げながら笑ってくれた。
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