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花占いのゆくえ 17

 窓に添えられた手がカタカタと小さく震え続けていて、薫の様子は明らかにおかしい。 「そんな に、いい匂いが、した?」 「ミナトさん?  は、全然しないかな、普段は抑制剤が効くらしいし」 「あ、あれだけっ匂いがっ……って  」  震えた手が拳を作り、それがオレに振り下ろされたのはあっと言う間だった。  細い腕と侮っていると痛い目に遭うのは六華の時に学習済みだ。  でも少しでも触れ合える瞬間を逃したくなくて、胸に振り下ろされた拳を甘んじて受ける。  受ける  が、痛みがあるかどうかは別だ。 「 ────っ‼」  一瞬息が詰まるような衝撃があって、情けないことに盛大に顔が歪むのがわかった。  六華に入れられたヒビがここまで響いて来るとは…… 「  ぅ、っ  ぁ」  窓枠に縋りながらずるずるとしゃがみこんでしまったオレに、薫のはっと見開かれた目が向けられた。  薫の瞳に映ることが出来るなら、この痛みが甘く感じる。 「あ あ  ごめ  ちが   そうじゃ い、痛い よね?」  窓から身を乗り出してオレの無事を確認しようとする薫の腕を咄嗟に掴んだ。  そうしてしまうと窓枠が邪魔になって、薫はオレから逃げられないのはわかっていた。 「 き……」  顔を上げて薫にキスをする。  つやりとした、マットともテカテカとも違う滑らかな唇を舐めて、薫の思考が動き出す前にその両方の頬をそっと覆って更に逃げられないようにして、深く味わうように舌を差し込んだ。  オレを拒むと思っていたのに、薫の唇は罠があるのではと思わせるほどあっさりとオレの舌を受け入れてくれて、舌先に真珠のような固い歯が触れた。  唇の隙間が寂しくて、伸び上がって密着させると、二人の呼吸はすぐ傍で、お互いの息が睫毛を揺らすのが、酷くいけないことをしているような気分にさせる。  ちゅ ちゅ と優しく唇で、薫の可愛らしい唇を食むと、その奥にある舌がびくりと震えて戸惑って、逃げて行ってしまいそうだ。  だから逃げられる前に絡めて捕まえて、軽く歯を立てて逃げられないようにした。  薄く開いた唇から零れた舌が、今にもオレに噛み千切られそうで、涙を零すその姿はただ食べられるのを覚悟した草食獣のようだった。

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