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花占いのゆくえ 22

「    何も」 「そんな訳ないよね!不自然な間があったよ!」  ぷぅっと膨らむ頬を突いて、昨夜薫を怒らせたことを思い出す。  薫はどうして怒ったのか……きっかけになる会話を思い出そうとしたけれど、特にどうと言う事のない会話だ。  ミナトとのことは昼間に会ったから別に問題じゃないとして、海浜学校に持っていく物が派手で怒った?それとも…… 「  愛してるって言ったのが、良くなかったのかなぁ」 「────っ」  ぴょこん と六華が小さく跳ねる。 「そ、そ、そんな、なんか、なんか、あ あーあいー……とかっ」  ん?と視線を下ろすと、六華は頬をぱっと赤くしてその言葉が恥ずかしいとばかりに顔を覆った。  むず痒いのかバタバタと足踏みしてから、体を揺すっている。 「な、な、なんか、喜蝶、大人、だね」 「なんでそれで大人なんだよ」 「だってっだってっ!好きは分かるもん!きゅーんってなって大好きだって思うけどっ」  顔から降ろした手を胸の前でもじもじと弄り、つんと尖らせた唇から溜め息のような長い息を吐く。  言葉にするのも躊躇われるほど恥ずかしいものなのか? 「――――愛 は、まだ難しい、かな」  真っ赤な頬を押さえて睨み上げてくる六華に思わず笑いが漏れる。 「お子様」 「むっ」  ぽすん と腕を叩かれても、全然痛くない。なので代わりにまた髪をぐしゃぐしゃと混ぜっ返してやると、ムキになったのか腕に飛びついてきた。 「なんだよ!一人大人って顔しちゃってさ!」 「言葉一つで真っ赤になる六華よりは大人だろ?もう止めろって、服伸びる!」  袖口を引っ張られ、カーディガンが伸びるのを慌てて止めると、それまで照れ臭そうにしていた六華がはっと校門の方へと視線をやった。  黒い自家用車が少し戸惑うようにブレーキランプを灯してから、そろそろと校門の中へと入り、職員玄関前のロータリーをくるりと回ってから停車する。  父兄が送ってきたのかと思うも、助手席から降りてきたのは薫だ。  けれど、薫の家の車はSUVの白色のはず。 「送ってくれてありがとうございます、忠尚さんも気を付けて帰ってくださいね」  お辞儀する薫からそう声が聞こえた途端、腕に引っ付いていた六華の体がきゅっと固まる。

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