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花占いのゆくえ 43

「 ────専攻は油絵」 「え?」 「僕のこと。芸術学部、美術学科、絵画コース。姉が一人、姉の影響で小さい頃から絵を描いてたよ、あとはー……ピアノも少し弾ける、好きな作家は田城玄上、チョコレートが好きだよ、嫌いな物は……ピーマンかな、あと人参も」 「オレもピーマンは苦手。好物は甘いもの」  そう返すと、手は動かしたまま小さな笑いが返った。 「じゃあ、また甘い物食べに行こっか」  手を止めて、身を離してから少し眇めて見て小さく頷く。 「ん。今日はこの辺にしとこっか、寒くなかった?」  ほっと全身の力を抜くと、慣れないことをしたからかぐったりとした脱力感に襲われて、ミナトの言葉に首を振って返すのが精いっぱいだ。 「ありがとうね、お疲れ様」  順番に手渡される服を身に着けていると、最後のブレザーの所でミナトの手が止まる。 「ねぇ、ちょっと着てみてもいい?」 「懐かしい?」 「母校は学ランだったんだ」  そう言うとミナトはオレのブレザーにおずおずと袖を通して、指先が出ないのを見てふふと嬉しそうに笑った。  大きな服を……自分の服と言うのもあるのだろうけど、そんなぶかぶかの服を着て、嬉しそうにしていると心のどこかがざわざわっとして、ブレザーを返してと言うことが出来ない。 「ブレザーは憧れたなぁ」 「高校で学ランなんて珍しいよね」 「うん」  線の細いミナトでは似合わなかったんじゃないか……と思っている所で、扉が遠慮がちに薄く開いた。  不安そうな表情の薫がその隙間からこちらを見て、オレを見つけて一瞬安堵の表情を浮かべたが、隣のミナトに視線を移してあっと言う間に顔を曇らせてしまう。 「薫!もう終わったから帰ろうか」  少し困ったような戸惑うような、そんな表情も可愛い。  駆け寄って中に入るように促したけれど断られ、小さく睨まれた。 「帰ろ」  少し唇を尖らして、薫にしては珍しくぶっきら棒に呟く。  視線も合わないし、まだ機嫌は悪いままのようで……どうしたものかと考えながら、ミナトに「もう帰る」と告げた。 「うん!じゃあ、また明日もお願いね」 「は⁉」 「え⁉この話もしてなかった⁉」 「聞いてないよ!完成したんじゃないの?」  じっとしている と言うのは思った以上に体力を使うようで、座り込みたいくらいくたくただ。  これを明日ももう一度……と言われると、うんざりする。 「まだまだだよ!えっ と、出来るだけ急ぐように頑張るから……お願い!」  袖口から出ない手を合わせて、オレに一生懸命お願いをしてくる姿は、正直心がグラグラと揺れる。

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