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花占いのゆくえ 55
相手が幸せならそりゃ嬉しい。
でも自分の手で幸せにしたいと思う。
愛している人間の隣に自分がいて、相思相愛であってこそ、幸せなんじゃないのか?
オレには、二人だけの世界で完結している両親の幸せの在り方しか知らないし、そこから弾き飛ばされて、邪魔しないように存在を消しながら生きなくちゃいけない人間の不幸せ感だけははっきり分かっているから……
『そんなの、愛じゃない』
はっきりそう返してやると、六華は怯えたように肩を跳ねさせて、それから小さくうずくまるようにして俯いてしまった。
個々人で考え方が違うのだから、イライラして悪いことをしたとは思うけれど、謝罪する気にはなれなくて、そのまま携帯を机の奥深くに押し込んだ。
ホームルームが終わってすぐに教室を出ようとした薫を捕まえて、一緒に帰ろうと促す。
「でも、俺は忠尚さんのお店に行くから」
「…………じゃあ、オレも行く」
は?の言葉と共に信じられないモノを見るような風に目が見開かれて……それでも、そこにオレが映っているのだから問題ない。
薫はオレを行かせたくないのか、甘い物はないから とか、人の多い時間だから とか、いろいろと言ってきたけれど、まるっと無視した。
授業中のやり取りが大打撃だったのか、六華はそんなやり取りを見ても割り込んでは来ず、困ったような顔で俯いているだけだ。
言い返されて反論できないで落ち込むなら口を挟まなきゃいいのに……
木とガラスでできたシンプルな?素朴な?造りの扉を開ける前に、薫はもう一度だけオレの方を振り返って窺うように目を瞬かせた。
距離があるせいか、その目にオレが映っているのかどうかが確認できなくて、学校からの道筋でほどんど会話らしい会話もできなかったこともあって、酷くそれが苛つく。
「 ────どうしたの?入っておいでよ」
キィ と微かな扉の開く音と朗らかな声が聞こえて視線をやると、野暮ったい眼鏡の向こうの目が驚いて見開かれるところだった。
自分の恋人と、その恋人に横恋慕している人間が一緒にいるのは不愉快だろうに、間を感じさせないほどの素早さで中に入るようにと促してくる。
紫の菱形をしたオーナメント、観葉植物と、無垢の木のカウンターは扉で感じた通りの素朴さだ。
「 ごめんね」
小さく忠尚に耳打ちする薫の声と、「お友達も連れてきてくれて嬉しいよ」と返す声にむかっとした感情が擡げる。
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