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花占いのゆくえ 56

 それがその他と一括りにされた苛立ちなのか、敢えてお友達と言われたからなのか、ライバルですらないと言われているようで、そのあしらいに腹が立った。 「客、いないんですね」  つん として言ってやった言葉に一瞬面食らったようだったけれど、穏やかそうな顔を取り繕う隙が垣間見える。 「  アイドルタイムだからね。だから、いつも薫くんと二人でのんびりする時間なんだよ」  にこにことオレを素通りして薫に向けられる笑顔を遮りたくて、わざとその間を通るようにしてカウンターへと腰かけた。  オレが座ってしまったからか、仕方なくと言うように薫が隣に座り、オレと忠尚をちらりと見て俯く。 「いつもと同じでいい?」  そう敢えて聞くと言う事は、ここで飲む固定の飲み物があると言う事で……  どれだけ薫がここにきているのかを暗に言われた気がしてぐっと言葉が詰まった。 「はい!……えっと、喜蝶は  ?」 「薫に任せる。オレの好みはわかってるだろ?」 「じゃあ、喜蝶はカフェオレね、甘めにしてもらうよ?それから、バニラシロップを入れてください」  オレの好み通りの注文に嬉しくなったが、ぎくしゃくと忠尚の動きが可笑しくなったのが見れたのはもっと嬉しい。  薫はオレのことを良くわかってくれてるし、薫のことを良くわかっているのもオレだ。  カチン カチン と動揺からか大きく響く食器のぶつかる音を聞きながら、なんとなく勝った気分で頬杖をつく。 「はい、どうぞ」  オレと薫の前にそれぞれカフェオレとミックスジュース、それから小さな菱形のクッキーを出して、その隣に砂糖の壺をワザとらしく追加する。 「だいぶ甘くしたけど、うちのカフェオレは大人向けだから、よかったらどうぞ」  ぐっとカウンター下で拳を作り、睨みつけたいのを堪えて気にしないふりをした。  甘い物が好きだからお子様だと? 「よかったね、喜蝶。適当に入れておくよ?」  そう言うと、オレが何も言わないうちに薫がさらさらとオレの好みの分量をカップに注いでいく。  さすがにこれには忠尚もだがオレもびっくりした。  もっとも、肝心の薫はオレの世話を焼くのが日常的過ぎて、忠尚の前で甲斐甲斐しく他の男の世話を焼く意味を良くわかっていないようだ。

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