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Dog eat Dog 16
「知り合いの子が抑制剤が合わなくてね、発情剤でヒートのタイミングを調整しようって話になったんだよ。懇意にしている子だからさぁ。まぁ便宜を計るのも立場上良くないしさぁ ってことでね」
「はぁ、そうですか」
抑制剤が合わなくて発情剤を作るのに、作るのは一度きり……なんて、おかしい話だ、少なくともΩの発情は生殖可能年齢の間はずっと続く。
取ってつけたようなそんな事情を言わなくとも、こっちは糊口を凌ぐためには働かなきゃいけないんだから何も言うはずないのに。
怪しい注文の仕方だけで、これが金持ちの道楽のための注文だってことは筒抜けなんだから……
大方、Ωと発情セックスしたい ってとこか?
発情期のΩとのセックスはそりゃぁ気持ちいいらしいから。
「じゃあこれ、採取した精液ね」
ランチボックスサイズの箱をひょいと目の前に差し出されて反射的に受け取るけれど、他人の出したナニをひょいひょいと手渡してしまえるこの感覚は、いつになったら慣れる事が出来るんだろうか?
命の元、精液、ザーメン、おチンポミルク……なんでもいい、そう言ったものを軽々しく扱うのは、なんだか生命を安易に扱っているような気がしないでもなくて、薬を作る為に必要だとは言えなんだか落ち着かない。
抑制剤の方が圧倒的に多けれども、発情剤も時折オーダーは入ってくる。正反対の薬だったけれど、精液が必要 と言う部分はどちらも一緒だった。
この精液採取があるから、オーダーメイドに踏み切れないと言う話を聞いたりもするが、今の研究ではこれが精いっぱいだ。
この精液を分析して一人一人、その人の体質に合わせて調整して処方するのがテーラーメイド薬。
今の市販の抑制剤だってよくできているけれど、どうしても大衆から零れ落ちる個体と言うものがある、本来ならば合わない薬を無理矢理服用しながら、副作用に七転八倒して生きて行かなければならない。テーラーメイドはそれを改善するために確立された物だ。
一人一人の体型、体質、フェロモンの種類、その他夥しい情報を揃えてそれを踏まえて内容を決めて行く。
どれ一つとして同じ内容はない。
「君には負担かなぁ?他の人に振ろうか」
かっちん とくる物言いはこの人の癖なんだろうか?
上から目線で「作れ」だけでいいのに。
「 いえ、仕事ですから、負担とは思いません」
「そう、ストレス溜まるようだったら早めに相談してね」
にっこにっこと胡散臭い笑顔を残して、瀬能先生は部屋を出て行った。
わざわざ昼休みの人がいない時間を狙って来たかと思えば、これか。
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