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Dog eat Dog 17

 ガリガリと乱暴に頭を掻いてやると、毛布みたいな艶のない毛が絡まってイライラに拍車をかける。これからも長年付き合って行かなきゃいけない頭髪だけど、もういっそ剃ってしまう方が楽かもしれない。そうすればストレスで禿げただのなんだのと心配しなくて済むだろう。 「はー……金持ちの道楽に付き合わされるとか、くっそ面倒」  こつん こつん と栄養ゼリーのパウチを指で弾いて、未使用だったカバー付きのクリップボードを引き寄せた。  今日は二十三日だから、……『ふみか』かな、『ふみ』でもよさげだ。  ふん?と首を捻りながら、今回のテーマである森ガール風の装いでくるりと回って見せた。鏡の中ではどこかぽや とした雰囲気の女性がこちらを見詰めている。  前回の低めのパンプスが癖になったので、スカートの長さを度外しして踵の低い靴を履けるスタイルを選んでみたが、前回とはまた雰囲気が違っていたいいんじゃなかろうか?別に報復が怖いとかそう言う訳じゃないが、毎回同じ服とメイクでいて怒鳴り込まれても面倒だ。まぁ、もしそうなったらΩにやられて首を噛まれたαって怒鳴り返すだけだけど。 「さぁ、今日は鬱憤晴らすぞーっ」  秘密裏に作れ……と言われた発情剤がやっと出来上がって、そのプレッシャーと重荷から解放された。  その解放感を表すように、ぐぃーっと背伸びしてから口角を上げて笑みの練習をしてみる。  今日の獲物はどんな奴にしようか?この間のなんとかと言った紳士ぶったαとは体の相性が良くて、オナニーネタにはぴったりだったけど、どうせ屈服させるならα然とした奴がいい……鼻っ柱をへし折られて無様に泣く姿が見たい。 「ふ、ひひ  」  楽しみだ。  繁華街の中でもメインの通りは今日も人通りが多くて、金曜日と言うこともあって芋を洗うと言う言葉をそのまま表したような状態だ。  ぎゅうぎゅうに押されながら人込みを歩いていると、すれ違った髭面のおっさんの肩に帽子が触れた。避けることも出来なくて、人に擦られてずれた帽子がぽろ と離れて行く。 「あっ  ちょ   」  手を伸ばそうとするが人込みは容赦なく、人の隙間にあっと言う間にニット帽が消えて行く。今回の変装用に用意した物だっただけに、ショックでぽかんと口が開いてしまった。 「ぇえー……」  オレの小さな体では、この人ごみを遡ってしゃがみこんで拾うのは無理だ。オレに気付かない奴に蹴られて踏まれてしまうのが目に見えている。  そう言う理不尽な部分を改めて見せつけられた気がして、むっと唇をひん曲げてみるけれど、帽子は諦めるしかなさそうだ。第一、もう踏まれてぐちゃぐちゃになってるだろう。

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