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Dog eat Dog 35
「こ この度のことは まことに申し訳なく……」
「いやまぁ、心にもないことは言わなくていいよ」
キシキシキシ とオマケのように椅子の軋みが言葉を追いかけた。
「第一、アルファ用抑制剤の指定目的以外の使用は刑事罰対象だよ、そんな言葉でどうこうできるものじゃない」
胡散臭そうないい笑顔を貼り付けて、空気だけがぴりっと引き絞られて行く。
何を言っても何を訴えても、何をどう言い訳しようとも敵わないと諦めさせる空気に膝が笑いそうだ。
「ま こと、に、申し訳……ありませ…………」
ひく と喉が引き攣る。
せめて謝罪の言葉を紡ごうと思うのに、こちらを見下ろしているであろう冷ややかな双眸を思うと、それもうまくいかずに途中で消えた。
「それで、どうする?」
「ど……」
どうする とは?
「警察に突き出されたい?たまたま君がアルファ用抑制剤を使う映像が撮れてしまっているんだけど」
それは、たまたまなんて物じゃないのはわかりきったことだけれど、言い返すことができなかった。
「た い……退職願を……」
「辞めて?今回のことが?どうにかなるんだ?」
「 っ」
口から出る言葉がなくて、は……と負け犬たらしく喘ぐような息が漏れた。
「わ わた、私に、何を しろと 」
犯罪の告発だけならばこんな回りくどいことをしなくてもいい。
底の見えないような薄気味悪い笑顔は、オレに一体何を要求しようとしているのか……この人自身は、色んな噂のある人だ、人付き合いをあまりしないオレにでも噂が入ってくるような、そんな様々な噂を持つ。
昔はヤクザと呼ばれていたような人間とも繋がりがあると聞く。
嫌な汗で掌が滑る。
「 ────まぁ、特にないんだけどね」
へら とした笑顔に湧いた殺意を飲み下し、「いやいやいや 」と呻けば、応えるように椅子をまたきしきしと軋ませた。
「そ、そんな 」
「考えてごらんよ、うちの研究所の職員がロットナンバーのない自作のアルファ用抑制剤を使ってました とか、自爆でしょ。研究所の管理責任問われちゃうよーやでしょ?そんなの。折角存在しない薬を使ってるんだからさぁお口チャックでいいでしょ?」
「でも、 」
「ちょっと灸を据えるくらいで良かったんだよ、正直、誰かと合意でホテルにって部分では僕の口出しする範囲じゃないしね。部屋の中でどんなプレイしようと、そこはプライベートだからさ。僕としては研究所員が危険なことを止めてくれればいいんだよ」
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