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かげらの子 47

 とりあえず、下半身から意識を逸らそうと書きつけている冊子を引っ張る。  先程説明を受けた話を、また書き留めておかねばならない と思いながら、捨喜太郎はそれを捲って今までに書き留めた村人達の言葉を読み直した。  行われるのは梅雨時の月夜。  基本は村の全員が参加する。  小さな提灯を持って家を出るが、この明かりは家から出た事を知らせる為だけ。  ………どうして?  ここは山間で、月夜と言っても時間帯によっては光が入らず真っ暗になる。  坂道だらけで整地もされていない道なのに、暗闇の中では危険だろう。  護摩でも焚くのかとも考えるが、畑や田を除いてそんなに開けた場所があっただろうか……と思い、首を振った。  それとも、ここに住む者ならば明かりなどなくてもこの整地されていない坂道だらけの村も難なく移動できると言うのか?  様々な疑問に知らずにぐっと眉間に皺が寄った。 「どんな意味があっての祭りなんだ?もう少し……詳しく聞く事が出来たらなぁ……」  そうごちて冊子のページを捲る。そこには最初に聞いて回った先神についての事が箇条書きにされており、それにもなんとなしに目を通す。  先神は、裂かれ神、男女に身を分かたれた神であり、先触れを知らせる蛇の神である。 「蛇の舌が裂けているから や、 ──── 」  摩羅が二つに裂けているから……の言葉は、声に出すのですら寒気を感じるので口の中で呟くだけにする。これを教えてくれた村人も、自身の身に置き換えて考えてしまうのか、この話をする時は精一杯おどけて話していた。  山に蛇が多いせいで生態に詳しいのかと尋ねると、この村では毒蛇を捕まえては蛇酒を浸ける人間に卸しているとの話だった。何代か前にそう言う知恵を授けて貰い、今では細々とだが現金収入の為の資源になっている と男は教えてくれた。 「知恵を 授けて   貰った?」  発案でもなく、授かった? 「誰に?」  その言い方だと、皆で知恵を出し合ったわけではなさそうだ と、捨喜太郎は首を捻る。 「蛇神は  知恵の神でもあったか?」  先を見通す力があるのだから、商売事も見通せるのだろうと無理矢理納得して頁を捲った。

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