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お可愛いΩ お可哀想なα 43

「六華くーん、どうしたの?早く行かないと時間無くなっちゃうよ?」  帰宅を嫌がる柴犬の如く、シュンに手を引かれて廊下をジリジリと進むその先にあるのは『大浴場』の文字だ!  男女の二性に加えてバース性でも分けてしまうと、皆で一斉に入浴しましょうって言うのが出来ないから時間は結構シビアだったりする。  海風でべとべとだし、入りたいんだけど……αなオレはΩ全般がそう言う対象に見えちゃうわけで……  なのでシュン達と一緒の時間帯に入ることは無理だ!  だからと言って男型αの入浴時間に入ろうとしたら怒られるんだろうけどね。 「ほら!オメガ同士恥ずかしいことなんかないって!」 「や、あの  」  同士じゃないからまずいし、裸なんか見たら更にめちゃくちゃまずい状態になっちゃうんだよっ!主に股間がっ!  おたおたとして時間を稼ごうとするけれど、シュンは手を離してはくれないし他の二人は溜め息吐いて鼻白んでるしで、もうここは素数でも数えながらお風呂に入らないとダメかなって覚悟を決めようとしたところに、ひょっこり通りかかった虎徹先生が声をかけて来た。 「ほーら、早く入らないと就寝時間になっちゃうよ!」  ちまっと手を腰に当てて注意してくるけれど、オレより小さいその身長のせいなのか顔立ちのせいなのか、全然怒られている気がしない。 「それから、阿川くんはちょっと手伝って欲しいことがあるから来てくれる?ちょっと人手が欲しいんだ」 「でも六華くんはまだお風呂入ってないんですけど……」  ってシュンが間に入ってくれるけど、虎徹先生は「ごめんねぇ」と引く気配がない。 「わかりました。ありがと、シュン!ぱぱっと行ってお手伝いしてくるよ!」 「お風呂待ってようか?」  ちょっと首を傾げて不安そうに言う姿にドキ としちゃうけれど、首を振ってから虎徹先生と一緒に歩き出す。  ギリギリだったけど虎徹先生が来てくれてよかった!一緒に入れなくて残念っとかは全然ちっともこれっぽっちも……いや、ほんの少しだけ勿体ないなって思うけれど、こうやって用事を頼まれて正解だったと思う。 「そう言うの、まだ早いしねっ」  なんの想像?って聞かれたらまずい想像を頭を振ってかき消していると、隣の虎徹先生がにやにやと笑い出した。 「なんの想像してんの?」  聞かれたらまずいって思ったばかりなのに、ピンポイントで聞いて来るのホントやめて欲しいっ! 「いやっ……変な想像してないですよ……」 「なんだ!えっちぃなのかと思ってたのに!」  くりくりっとした目を悪戯っ子のように輝かせて言われると、本気なのか冗談なのかわからなくなってきてしまう。

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