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お可愛いΩ お可哀想なα 46
何事もなかったように流されてほっと胸を撫で降ろした。
「んじゃあ行こっか?」
銀花がそう言って手を差し出してくれるけど……そーですよね、二人が割り込んできますよね……
結局、空ぶってしまった手を慰めるために両手で懐中電灯を握って歩き出す。
そこまで大きな建物じゃないけど、うちの学校の一学年を余裕を持って泊めることができるくらいだから、あっと言う間に回れる って言うわけじゃない。
しっかり懐中電灯を構えながら建物正面から向かって時計回りに歩き出す。
「ねぇねぇ、りっか!知ってる?」
「何を?」
それを言ってくれないと知っているのか知らないのかわからない、少しだけ歩調を緩めて銀花達に並ぶと、銀花がちょいちょいと指さす方を見た。
「食堂の壁のシミ知ってる?」
「シェフが生き埋めにされてるとか言う奴?」
食堂を過ぎて……
「レクリエーション室にぶら下がる逆立ちの人とか見た?」
「ああ、首に紐がついてるって奴?」
レクリエーション室を過ぎて……
「ランドリー室の洗濯機の中の生首は?」
「ごろんごろんうるさいって奴?」
ランドリー室を過ぎて……
「…………ちょっとその消臭剤貸して!」
「なんでだよっ!」
「なんでじゃないよ!除霊するんだよっ!なんでそんな行く先々におばけがいるのさ!」
「ちなみに宿泊部屋の東棟二階奥から三番目の部屋は、ガチっ!」
無駄に拳を作って高らかに言う義だけれど……その情報ありがとう、ちょうどオレの泊まる部屋だよっ‼
「もおおおおおっ!」
さっさと終わらせてやるとばかりに走り出す。
「あっ!りっか!お風呂場はアカナメが出るんだってっ!」
「なんでそこだけ妖怪なんだよっ!仲間外れ可哀想ぉぉぉぉぉっ」
泣きそうになりながら大浴場を通り過ぎようとして……足が止まる。
思わず見上げるとそこには大浴場の窓が少しだけ開けられていて、そこから湯気がふわふわと流れ出して、フェロモンとかそう言うのはまったく関係のない、石鹸とかシャンプーとかの普通にいい匂いが漂ってきて……
楽し気な声も聞こえてくる。
雰囲気から察するとΩの子達なのかなって感じがして、思わず足が止まってしまう。
「…………」
「覗くか?」
「…………」
「俺か義が肩車したら行けるぞ」
「…………」
「高い高いでいいか?」
とっさに返事が出なかったのは下心がムクっとしたわけじゃなくて……
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