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お可愛いΩ お可哀想なα 47

「   ────薫と喜蝶くんの話、聞いた?」 「   ────聞いた!」  思わずぐっと息を止めて空に上がっていく湯気を見た。 「   ────二人で家出したって!」 「   ────え⁉ 喜蝶くんが薫を襲ったって……」 「   ────ええ!だって、喜蝶くんアルファだもん、わざわざベータなんか襲うことないって!」  あの二人が恋人じゃないのは皆知っているけど、ただのクラスメイトじゃないって雰囲気は察していたから、こんな噂話が出るんだろう……  本人のいないところで、随分失礼な噂話をしてるなってむっと胸が悪くなる。  喜蝶は薫を襲ったりなんかしないし、もし二人が駆け落ち?したんだったら、絶対オレに一言くれるはずだ。 「   ────じゃあやっぱり二人で逃避行?」 「   ────ほら、六華がずいぶん邪魔してたから、嫌になったんじゃない?」  ひゅ と喉から音が出て、その言葉が胸の中でひやりと冷えて重く圧し掛かってくる。 「   ────あー……よく二人の間に割り込んでたもんね」 「   ────あれ可哀想だった、喜蝶くん怪我させられて……」  あれは、確かにオレが悪いけど……  でも、嫌になるくらい空気読まずに二人の間に割って入ってたかな?  オレはそう思わなくても、周りから見たらそんな感じで……もしかして、薫も迷惑してた?  仲のいい友人だって思ってたけど、ただオレがまとわりついてただけだったのかな?  だから、連絡もくれないのかな? 「   ────なんでそんな子グループに入れたの?」 「   ────さっきもグズグズするから、ゆっくりお風呂入れなくなっちゃったし」  オレの曖昧な態度が迷惑をかけてたんだって気づいて、懐中電灯で照らした足元を見る。  暗い中にぼんやり光って明るいはずなのに、なんだかぼやけてよく見えない。 「   ────そんなこと言っちゃダメだよ」  明るい、ハキハキとした声は間違えようのないシュンの声で、たしなめてくれるんだと……とわかってほっとして、目尻の涙を拭う。 「   ────銀花くん達を紹介してもらわなきゃなんだから!」  ひく と心臓が跳ねた。 「   ────うまく行ったら、将来身内になるかも なんだよ?今から好感度上げておかないと、小舅いびりとかされたら最悪だし」  流れるように出る言葉は淀むことを知らなくて…… 「   ────なんなら、仁くん達経由で、もしかしたらもっとセレブなアルファを紹介してもらえるかもしれないしー?」  玉の輿を狙うその声は朗々としてよく通る。

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